この物語は、第7巻の1章から8章までです。ここでとりあげるのは、主に6章までです。
この部分、なかなか込み入っています。
読者の皆さんも読んでみてください。
これまでの章の基礎知識はいらないと思いますが、登場人物(神)で、日の出神、康代彦と真鉄(まがね)彦は「正義」、八岐大蛇とウラル彦は「悪」と考えればよいでしょう。
神素盞嗚の神は霊界物語では主役、当然「正義」です。
他の登場人物(神)は初出です。
また、古事記でのイザナギ、イザナミが生んだ神様のうち、最初に産んだ大事忍男神(おほことおしを)、石土毘古神(いはつちびこ)、石巣比売神(いわすひめ)が出てきます。また、大戸日別神(おほとひわけ)、天之吹男神(あめのふきを)という名前も出てきます。
古事記で出てくるのは、名前だけですから、名前を使っているだけだと思っておけば良いと思います。これらの古事記の神名の神様は、とりあえず「正義」と考えておきましょう。
(WIKI)
二度読んでもらえばよいと思いますが、一度目は普通に、二度目は「大事忍男」は誰なのかに集中して読んでみましょう。
この大台ケ原物語では、偽称、偽名は出てくるし、登場人物(神)の立ち位置が複雑で、普通に読んでいると、意識の上面を滑ってゆくだけのように思います。
私も、これまでは、ただ「読んでいる」だけでした。
しかし、今回読んでみて、やっと内容がつかめました。
ここからは、全く読んでいない人には「ネタバレ」になります。
第5章日出ケ嶽で物語の大団円が示されます。
大事忍男神は大台ケ原の守護神となり、石土毘古、石巣比売は、この巌窟を住家とし、国土を永遠に守護し玉ふ事となりける。
大事忍男神は最初「白髪異様の老神」と描写されていますが、最初に登場した時から最後逃げてゆくまで「偽物」で、八岐大蛇の化身だったのです。
本物の大事忍男神については、説明に名前が出ているだけで、物語中には出てきません。
石土毘古、石巣比売も、自分は「邪神」であると偽って、八岐大蛇に対処しています。
また、盤古神王の名前も出てきますが、これも、その名前を偽っている者が複数いて、分かりずらくなっています。
私は、この分かりずらさは、この部分に、重要なメッセージを隠してあるのではと感じています。
(1)不思議な歌
日の出神の生魂
康代の彦の幸魂 真鉄の彦の荒魂
三つの魂と現はれて 神素盞嗚の神となり
霊界物語の主役である「神素盞嗚」は、霊界物語7巻で3回目の登場です。
1回目は霊界物語の最初も最初。「序文」です。
この部分は非常に重要だと思いますが、「説明」として出ています。
2回目は第5巻41章に出てきますが、歌の中に出てきて、私にはあまり重要とは感じられません。
そして、3回目がこれ。
康代彦と真鉄(まがね)彦は1巻から出ていますが、1巻は非常に人名(神名)が多く、あまり記憶に残らないのですが、この二人もさほど重要な神という記憶がありません。
日の出神+康代彦+真鉄彦=三つの魂=神素盞嗚の神
ということでしょうか?
通常、幸魂、荒魂は一霊四魂の一つとして出てきて、荒魂、和魂、幸魂、奇魂で四魂です。
ところが、ここでは幸魂、荒魂、生魂(いくみたま)と並んでいます。
生魂は「動物の霊」として使われている場合が多いですが、ここではどのような意味でしょうか。
また、三神については、天御中主大神、高皇産霊神、神皇産霊神で造化三神として使われます。
これは、宇宙の原因となった独一真神を見る時のVEIW(ビュー)=見方、つまり、対象は一つですが、3つの方向から見ると別々の三神に見えるということでしょう。
自分でも答えは持っていませんが、ここでの神素盞嗚の神は「働き」としてとらえたらどうかと思います。
(2)日の出神は誰の子供か
日の出神はこの巻までにかなり活躍をしている大道別の荒魂、奇魂です。
第4巻32章
大道別は恐縮しながら、国祖大神に目礼し、八王大神その他の神司らに一礼し直ちに御前を退出し、そのまま竜宮海に投身したりける。その和魂、幸魂はたちまち海神と化しぬ。国祖はこれに琴比良別神と名を賜ひ永遠に海上を守らしめたまひ、その荒魂、奇魂をして日の出と名を賜ひ、陸上の守護を命じたまひぬ。琴比良別神および日の出の神の今後の活動は、実に目覚しきものありて、五六七神政の地盤的太柱となり後世ふたたび世に現はるる因縁を有したまへるなり。
この前の巻では、日の出の神の前身大道別は高皇産霊神の御子となっています。
第6巻23章
高皇産霊神の御子たりし大道別は、日の出神となりて神界現界に救ひの道を宣伝し、此度の変によりて天教山に上り、それより天の浮橋を渡りて日の御国に到り、仏者の所謂大日如来となりにける。神界にてはやはり日出神と称へらるるなり。
また、大台ケ原物語より後の41章では、神伊邪那岐の大神の子供になっています。
第7巻41章
畏れ多くも神伊邪那岐の大神の珍の御子たる、日の出神に吾が素性を打ち明かし、
さあ、どうなっているのでしょうか?
高皇産霊神の方は、天御中主大神、高皇産霊神、神皇産霊神で造化三神の1つ。私の考えでは独一真神ということになります。
第6巻1章
この天御中主神の霊徳は、漸次宇宙に瀰漫し、氤氳化醇して遂に霊、力、体を完成し、無始無終無限絶対の大宇宙の森羅万象を完成したる神を称して大国治立尊(一名天常立命)と云ひ、ミロクの大神とも云ふなり。
宇宙の大原因たる、一種微妙の霊物、天御中主神の無色無形無声の純霊は遂に霊力を産出するに至れり。これを霊系の祖神高皇産霊神と云ふ。次に元子、所謂水素(また元素といふ)を醸成した、之を体系の祖神神皇産霊神といふ。霊は陽主陰従にして、体は陰主陽従なり。かくして此二神の霊と体とより一種異様の力徳を生じたり。之を霊体といふ。
この話題はこのあたりにしますが、いろいろ考えさせる歌です。
(3)第2章の歌
ちょっと長いですが、「今より十年のその昔」と「十年」という具体的な数字が出てきますが、霊界物語ではあまり具体的な年数は出てこないので、唐突な感じがします。
霊界の出来事を見る場合は、時間は分からないものなので、変な表現ではないでしょうか。
この歌にも、何か意味が含ませてあると思います。
第7巻2章
『世は常闇となり果てて
黄泉国に出でましし
国の御柱大神の
見立て給ひし八尋殿
真木の柱の朽果てて
倒れかかりし神の世を
起し助くる康代彦
心も堅き真鉄彦
天津御国に現はれて
瑞の御魂と諸共に
この世の元を固めむと
天津誠の御教を
天と地とに隈もなく
行き足らはして神の世を
いと平けく安らけく
親の位を保ちつつ
漂ふ国を弥堅に
締め固めたる大事の
忍男神の現れまして
神政成就成し遂ぐる
吾らは神の御使ぞ
千代に八千代に日の本の
礎堅く搗固め
神世の長と成り出でて
教を四方に敷島の
吾は康代の司なるぞ
吾は真鉄の司なるぞ
いま汝が前に現はれて
大事忍男神と云は
ウラルの山に蟠る
八岐大蛇の化身にて
今より十年のその昔
この神山に立籠り
瑞穂の国の中国の
神の胞衣をば打破り
この世を乱す深企み
これの深山に隠ろひて
数多の邪神を狩集め
再挙を図る浅間しさ
天の御柱大神は
魔神の企みを悉く
覚らせ玉ひて現世を
千代に八千代に康代彦
堅磐常磐に真鉄彦
造り固めて浦安の
日出づる国の礎を
照らす日の出の大神ぞ
仕組も深きこの山に
導き玉ふ雄々しさよ
東南西に海原を
控へて聳てるこの山は
難攻不落の鉄壁ぞ
汝が命はこの山に
堅磐常磐に鎮まりて
天津日嗣の皇神の
御位を守り奉れ
吾は左守の司となり
大和嶋根の神国を
真鉄の彦の弥堅に
弥常久に揺ぎなく
治めてここに立岩の
深き企みを打破り
曲神の悉平げむ
康代は右守の神となり
荒浪猛ける浮嶋を
神の稜威に搗固め
康代の彦の神となり
浦安国の心安く
千代に八千代に守るべし
朝日の直刺す神の山
夕日の直刺す神の峰
百山千谷のその中に
聳り立ちたる大台が
原の御山と永久に
日の出神と現はれて
天教地教の神々の
教を守る朝日子の
日の出神と成りませよ』
「天津日嗣の皇神の 御位を守り奉れ」は天皇系の用語ですね。